Oh! Sweet Nuthin'

音楽を「dig」る楽しさを伝えるブログ

随筆「邦楽フェスの最高峰:ROCK IN JAPAN FES. が生み出すヒエラルキーとドラマ」

僕がROCK IN JAPAN FES.」で発見した事、それは…

ROCK IN JAPAN FES.=邦楽シーンの縮図・覇権争いのコロシアム」である。

表のテーマ 「邦楽フェスの最高峰=邦楽アーティストの見本市」 × 裏テーマ「邦楽シーンのヒエラルキーの縮図」この2つが巧妙に作用するためだ

故に「ROCK IN JAPAN FES.」は必ず毎年チェックした方がいい!

というものです。それではこの2つのテーマがどのように作用し、ROCK IN JAPAN FES.」を特別なものにしているのか...考察していきます!

 

rijfes.jp

 

 

【2大テーマがアーティストの下剋上を加熱する】

まず始めに、現代のシーンにおいて、音楽リスナー・アーティストの双方が抱える事情について掘り下げ、「フェスの役割」について考察してみます。

 

・リスナー側の事情

音楽は、「全員が納得するようなオープンなランク付け」を行いにくい分野です。もちろん、音源の売上や再生回数、ライブの動員数等々、比較する尺度はたくさんあります。ディスクガイドや音楽メディアが年末に行う「今年の10枚」のような、豊富な知識と綿密な取材をもとに作成される有用なチャートも確かに存在します。しかし、人間の好みは、確からしい尺度をいくつか提供したからといって、そう簡単には変わりません。さらに、雑多な情報が優劣も曖昧に氾濫する現代では尚の事。「音楽は大好きだけれど、最近はどの情報を頼りに好きな音楽を探せばいいのか分からなくて…昔好きだったバンドをフォローしてるくらいで更新してないな」こんな人あなたの周りでよく見かけないでしょうか?みんな各々の「心のベスト10」を更新したいと考えているけれど、自分からどう動いたらいいのか分からない…現代の邦楽リスナーの多くはこんな事情を抱えていると思います。

 

・アーティスト側の事情

アーティストは生き残っていくために人気にならなければなりません。しかし、「心のベスト10」に収まるために、アーティストが越えなければならない壁はかなり多いのが現状です。「ライブ」「広告」「プロモーション活動」「タイアップ」...練りに練った作戦を元に、これらの活動を精一杯に行う...多くの壁を乗り越え、ようやくリスナーの耳に届いてから、既存の「心のベスト10」との勝負が始まります。壁は多いし、リスナーの顔も見えない...ミュージシャンは非常に非効率な活動を強いられます。しかし、この努力の有無こそが「人気」に直結する訳であり、目を背けるわけには行きません。

上記のような「リスナーの事情」と「アーティストの事情」双方によって、「心のベスト10」は中々入れ替わりません。

せめて条件をそろえて、アーティスト・リスナーが一堂に会し、「せーの」で勝負をする場があれば…あります、それこそが「音楽フェス」です。

 

そして、ROCK IN JAPAN FES.」は邦楽リスナーが「心のベスト10」の入れ替えるのに、邦楽アーティストが「心のベスト10」へ下剋上を仕掛けるのに、この上無い程に最高のステージとなっています。

表のテーマ「邦楽フェスの最高峰=邦楽アーティストの見本市」がリスナーを鼓舞し、裏テーマ「邦楽シーンのヒエラルキーの縮図」がアーティストを鼓舞し、双方が大きな揺さぶりをかけるからです。

 

「メインステージの大トリだったバンドAよりも、同時刻ウラの準メインステージだったバンドBの方が、俺の中ではベストアクトだったよ」こんな会話、フェス帰りの鉄板の話題ですよね。フェス終わりに「ベストアクトの選定」をする。音楽ファンなら当然の儀式です。この「ベストアクトの選定」は、他のフェスでも頻繁に行わる現象であり、「ROCK IN JAPAN FES.」に限ったものではありません。しかし、「ROCK IN JAPAN FES.」の2大テーマは、「ベストアクトの選定」をより加熱させます。

 

・「邦楽フェスの最高峰=邦楽アーティストの見本市」

デビュー1年目のフレッシュな若手から今年の桑田佳祐のような生ける伝説まで…このフェスは「心のベスト10」の入れ替えに必要な「材料」が山盛りに揃ってます。そして、アーティストは同じ会場で同じリスナーを前に、「邦楽フェス最高峰におけるベストアクト」の栄冠を競い合う...この結果から生まれるROCK IN JAPAN FES.のベストアクト」は、当然に他のフェスのベストアクトよりも、その重要性を増します。

さらに、このフェスは「洋楽勢」が不在です。「洋楽と邦楽の線引き・比較」は日本の音楽ファンの永遠の問題とも言えるものですが、他の権威あるフェス、「FUJI ROCK」や「SUMMER SONIC」と異なり、その問題の影響は皆無です。

即ち、「ROCK IN JAPAN FES.」はリスナーにとって、邦楽アーティストの最良の見本市として機能している訳です。

 

・「邦楽シーンのヒエラルキーの縮図」

繰り返しになりますが、このフェスはデビュー1年目のフレッシュな若手から今年の桑田佳祐のような生ける伝説までキャリアを問いません。さらには欅坂46のようなアイドル、Crossfaithのようなメタルコアまで、ジャンルも問いません。結果、「マニアックな音楽性だから動員がとれなかった」「アイドルは固定のおっかけがいるからズルい」なんて言い訳のできない、シビアな環境:邦楽シーンの縮図が出来上がっています。

さらに、タイムテーブルがこのシビアさに拍車をかけます。「タイムテーブルの並び=No1.業界誌が動員を予測して格付けした結果という露骨なヒエラルキー」「タイムテーブル真裏の大物バンドに客を取られ、スカスカな客席を前に演奏を強いられるであろう中堅」「同期デビューで同時間帯にも関わらず、片方はメインステージ、対するもう片方はサブステージに配置された若手2組」etc...裏事情を依り代に、フェスのタイムテーブルは非常に複雑なヒエラルキーを描き出します。

もちろん主催者側だって「同じような客層のバンドは時間帯をずらす」「ベテランと若手はバランスよく配置する」等、精一杯配慮をしているでしょう。しかし、これだけの大規模フェスで、そのバランスを完璧にとる事は不可能なのです。

 

さて、見本市としての役割と、複雑なヒエラルキーの顕在化で何が起こるのか...

リスナーは積極的にランクづけを行うよう動くようになり、アーティストは普段以上の鬼気迫るパフォーマンスを見せるよう努力するのです!

結果、フェス会場が覇権争いのコロシアムと化し、その熱気はアーティストの闘争心に火を点けます。特に若手アーティストに顕著なこの傾向、「人気の有無」が死活問題に直結する若手アーティスト達の燃え方は殊更です。真裏で公演を行うアーティストへの闘志を4日間の中で頻繁に耳にした事か。「あいつらには負けねえ」が様々なドラマを生むのです。

 

【結果生み出される下剋上ドラマ】

【可視化されたアーティストの実力】

 

は非常に興味深いものでした。既に長文のためここでは割愛しますが、後日「ライブレポート」として別記事にまとめますのでそちらも御覧頂けたら幸いです。

 

【まとめ】

ROCK IN JAPAN FES.」はリスナーにとって「アーティストのむき出しの人間性を見る事で音楽をより深く知る事のできる場所」であり、アーティストにとって「自らのポジションとアーティストパワーの正確な把握」ができる場所です。

こんな風に「音楽業界」という世界の中で起きている事を顕在化してくれるフェスは国内には他にありません。「邦楽ファン」と「邦楽アーティスト」は、毎年絶対にチェックしなければならない特別なフェス...今後もどんなドラマを生み出すのか追い続けたいと思います。