Oh! Sweet Nuthin'

音楽を「dig」る楽しさを伝えるブログ

7月のPV(洋楽編) 「Jay Som - NPR Music Tiny Desk Concert」「Jack Johnson - My Mind Is For Sale」

7月リリースのPVの続き…

 

2つ目はこちら↓

Jay Som: NPR Music Tiny Desk Concert

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アメリカのラジオ局であるNPRがPodcast向けに配信している「Tiny Desk Concert」という企画シリーズ。このPVにも使用されている「Tiny Desk」と呼ばれるオフィスの一角をライブ会場として利用するというルールの元、週1~2回程度のペースで、毎回様々なアーティストが代わる代わる登場するのが本企画の特徴だ。

登場するアーティストはジャンル・知名度・キャリアともにばらばらで、Chance The Rapperのような現代の最重要ラッパーから、今回のJay Somのようなカッティング・エッジな新人ロックアーティスト、果てはSun Ra ArkestraのようなマニアックなJazzの大御所まで多岐に渡る。

Jay Somはアメリカはオークランド出身のSSW。2017年3月に発売となった最新作「Everbody Works」が現在注目を集めている。「ブルーアイドソウルをアジア人がロックアレンジで演奏する」といった作風で、現代のアメリカの音楽シーンでは相当マニアックなキャラクターを有するミュージシャンだ。情報が非常に少ない彼女、Wikipedia情報だとフィリピンがルーツに関係しているみたい。

僕は彼女をPitchforkの高評価で発見、Tiny Desk の出演者をチェックする中で最近よく耳にする名前だな、と気になり今回紹介するに至った。

今回の動画では、自身の最新作より「The Bus Song」「Bay Bee」とBandcampで昨年公開された同名EPより「I Think You're Alright」の3曲を披露している。

Liveの一発録りという環境が、彼女の持つ「個性的なボーカル・リズム」という魅力を存分に引き立たせている。フレーズの後に残るアジアンポップス風の余韻や、ラップとは異なるSSWならではの不思議なフローがたまらない。

2017年2月にデビューしたVagabonのLaetitia Tamkoや2016年のデビュー盤でロック界の台風の目となったMitskiをなどなど、昨今のロック界では「多様なルーツ X 女性ボーカル」という特徴を持つアーティストの、その特徴を活かした活躍が目覚ましい。米国のカルチャーが「人種」と「性別」の2点を軸に盛り上がりを見せている事を鑑みれば、この流れはしばらく続いていくだろう。彼女の表現するマニアックな音楽が、今後どのように活躍するのか、気になるところだ。

 

3つ目↓ 

 Jack Johnson - My Mind Is For Sale

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突如公開されたJack Johnsonの新曲。この曲の公開と同時に4年ぶり、7枚目となるNew Album「All The Light Above It Too」のリリースがアナウンスされた。

New Albumに関するジャックのコメントをネットで調べると、どうやらパーソナルな内容になるみたい。この曲も大胆なバンドアレンジはなく、シンプルなギターと鍵盤だけでなりたってしまう内容だし、PVもハンドメイド感が強い。個人的に彼のパーソナルな作品という点には凄く興味がわく。というのも彼の哲学ってかなりユニークで興味深いものだからだ。

彼の存在を知る人に、彼がどんなアーティストなのか説明を求めれば、十中八九「海」「サーフィン」「ギター」というイメージを含んだ回答が返ってくるだろう。それ程にJack Johnsonというアーティストのイメージは特徴的だ。誤解を恐れずに言えば、記号的と言ってもいい。「Jack Johnson」=「海」「サーフィン」「ギター」という記号・方程式は、彼のデビュー当初から、世間が彼に対して抱えている非常に強固なものだ。

しかし、彼の楽曲を一歩踏み込んで聴きこんでみると、彼がその記号・方程式に「ただ忠実なだけ」のミュージシャンではない事がよくわかる。それらはあくまで彼の土台でしかなく、彼の作り出す作品の核になるのは、その土台から育まれたジャック独自の哲学だ。一部ではトランプ批判なんて解釈もある今回の楽曲もそうなのだが、彼の作る歌の内容は、現代を生きる人々が抱えるエゴや問題を、彼独自の哲学で見つめたものが多い。この哲学があってこその彼の音楽なのだ。巷ではこの土台ばかりが話題になりがちだし、ショウビジネスの世界でそれは仕方のない事なのはよく理解している、しかしそれは非常にもったいない事だと僕は常々感じていた。のでこんなに長文で書いてしまいました…

とにもかくにも、彼は間違いなく現代のSSWの最高峰だ。土台・哲学・スキルの三転倒立を長年に渡って維持し、その作品のクオリティを維持し続けている存在は珍しい。そんな彼の作るパーソナルなアルバム。彼がこの混乱の世の中で何を訴え、どのように世界に影響を与えるのか、非常に興味深い。発売が待ち遠しいぜ!

 

(蛇足だけれど、彼と同じサーファーでサラリーマンをやっている僕としては…PVのジャックの日焼けから、サーフィン三昧な日々を想像してしまった…上記の通り、彼が環境に恵まれているだけの人間ではなく、日々の努力を通して磨き上げた感性と哲学で今のポジションを維持し続けているのはよくわかっているんだけどね…でもなーやっぱりその環境は羨ましすぎるよ。)

 

また書きすぎた…邦楽編へ続きます。